Vol.17 住生活基本法でどう変わる?

昨年6月、40年にわたって日本の住宅政策の柱になってきた住宅建設計画法に代わり、「住生活基本法」が成立。住宅政策は「量の確保から質の向上へ」と大きく方向転換しました。昨秋にはこの基本法に基づく国の「住宅基本計画」の中で具体的な数値目標も定められ、県レベルの基本計画に対して、広く意見の募集も行われました。これにより、日本の住宅事情はどう変わるのでしょう。
4つのテーマに数値目標を設定
新たに定められた「住生活基本計画」は、平成27年度までの10年間が対象です。その目標テーマは、
- 「良好な住宅ストックの形成及び将来世代への承継」
- 「良好な住環境の形成」
- 「国民の多様な居住ニーズが適切に実現される住宅市場の環境整備」
- 「住宅確保に特に配慮を要するものの居住の安定の確保」
の4つです。それぞれのテーマには具体的な数値目標も設定されています。
この中で、特に一戸建て住宅と関連の深い項目について、詳しく見ていきます。
良質な住宅ストックとは?
まず、①に関しては、昭和56年に定められた「新耐震基準」をクリアする住宅ストックの比率を、現状の75%(平成15年度)から90%まで高めることが掲げられました。このため、すでに東京都や神奈川県などでスタートした耐震診断・耐震改修への補助金制度などが、自治体レベルで拡充されていくと思われます。
もうひとつの柱は環境問題への対応です。一定の省エネ対策を講じた住宅ストックの比率が18%(平15)から40%(平27)まで高められます。この一定の省エネ対策とは「全部または一部の窓に二重サッシまたは複層ガラスを使用する」という内容です。埼玉県の達成率は平成15年度で12%。県の計画では27年度までに35%に増やす予定です。
さらに新築住宅については、アキュラホームの「はるの」でも採用している「次世代省エネ基準」の達成率を現状の32%から50%(平成20年度)へ引き上げるとしています。これは地球温暖化防止のための京都議定書が定めた温暖化ガス削減目標と連動したものなので、この目標が見直された場合は、こちらもおそらく引き上げられることになります。
良質な居住環境の形成
②のテーマで具体的な数値目標が挙げられているのは、おもに防災面の項目です。大地震発生時に大規模な火災が発生する危険性がある住宅密集地が全国に約 8000ヘクタールありますが、これを平成23年度中に100%、最低限の安全性が確保されるように改善すると定めています。
また、地震時の地滑りや洪水による氾濫、床上浸水、土砂災害、津波・高潮などから守られる区域、戸数などの目標も以下のように定められました。
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- 地滑りで重大な被害を起こす可能性がある大規模な盛土をした造成地の数
- =約1000箇所(平17)⇒約500箇所(平27)
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- 洪水による氾濫から守られる区域の割合)
- =約58%(平14)⇒62%(平19)
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- 床上浸水を緊急に解消すべき戸数
- =約9万戸(平14)⇒約6万戸(平19)
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- 土砂災害から保全される戸数
- =約120万戸(平14)⇒約140万戸(平19)
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- 津波・高潮による災害から一定水準の安全性が確保されていない地域
- =約15万ヘクタール(平14)⇒約10万ヘクタール(平19)
また、国の計画では数値目標は掲げられませんでしたが、緑豊かな自然環境や市街地の空間のゆとり、良好な景観を整備し、高齢者や子育て世帯などが各種の生活サービスを受けやすい環境を整備することなどもテーマに挙げられていて、自治体レベルの基本計画にゆだねられる形になっています。
埼玉県の例では、「美しい街並みづくりに取り組んでいる地域(地区計画、景観地区、高度地区が該当)」を平成17年度の327地区から、平成23年度には450地区まで増やす計画です。
住宅市場の環境整備
③については、主に仲介市場の活性化に関連するテーマですが、住宅の質について新築と関連の深い数値も設定されています。その第一は、新築住宅における「住宅性能表示制度」の実施率で、平成17年度の16%を平成22年度には50%まで上げる計画です。また、住宅を利用・活用する期間も現在の約30年から 10年間伸ばし、平成27年度には40年にするとしています。
さらに、無理ない負担で良質な住宅を取得できるように、長期・固定型などの多様な住宅ローンが利用しやすくなるような住宅金融市場の整備や、税制上の措置などにも力を入れていくそうです。大いに期待したいところですね。
居住の安定の確保
④は主に、公共賃貸住宅や民間賃貸住宅に関連するテーマで、これらの賃貸住宅の最低居住面積水準に達しないものの比率を下げ、一定のバリアフリー化した住宅の率を現状の29%から75%まで引き上げることが、数値目標に掲げられています。
重点供給地域の設定
新築住宅については、県の住生活基本計画の中で重点的に住宅および住宅地の供給を図るべき地域が定められています。埼玉県の場合は、
- 低・未利用地型(既存市街地内の新規住宅地)
- 市街化区域内農地型(同上)
- 既成市街地内の木造低層住宅地(居住地整備促進型)
- 既成市街地内の駅周辺地域等(高度利用促進型)
- 新市街地型
の5タイプ324地域、合計1万4957.9ヘクタールで今後10年間に新築住宅が供給されることになります。地域の名称、位置、面積などは埼玉県の住生活基本計画の別表1に詳しく記されていますので、確認してみてください。
「埼玉県の住生活基本計画」詳細 ⇒ 埼玉県のホームページへ
こうしてみてくると、住宅基本計画はマイホームの安全性、快適性、耐久性(寿命)などを向上させるだけでなく、新築住宅の供給や仲介市場の活性化にも配慮したものとなっていることが分かります。単純な住宅戸数はすでに昭和48年に供給過多になっているので、矛盾点が無いとはいえません。戸数が余っているところへ良質の新築住宅と良質の中古住宅を増やすというのですから、もしかしたら住宅価格は下がる方向に向かうのでしょうか?いずれにしても、これから10年間の住宅市場の動向には目が離せない、といえそうです。






